水土技術研究所からの挑戦状
遠隔地から水質を連続的にモニタリングするシステムの構築
日本は先進諸国でいち早く少子高齢化と人口減少が進む国です。そして東京などの都市部に人口が集中する一方で、地方では人口流出によってさらに人口が減少しています。
これまでの日本のインフラは人口増加に支えられてビッグスケールな施設やハイテクによる効率化の追及が進んできました。しかし、これからは従来通りのインフラを維持するのが厳しい地域も出てくるでしょう。この50年かけて整備してきた日本のインフラは今まさに転換期を迎え、下水処理施設はその最たるものの一つです。
公衆衛生の要である下水処理施設はビッグスケール化しています。多くの都市部では、私たちがトイレやお風呂、その他の生活や産業で使った水は地下に張り巡らされた下水道を通り、最終的に下水処理施設に集約して処理されます。このように大規模な下水処理の方法は、人口密度の高い地域で広く普及しています。一方で人口密度の低い地域では、汚水を個別に処理する浄化槽などのスモールスケールな処理方法が多く採用されている傾向にあります。
我々が普及を目指し研究開発している水土浄化システムは、汚水をその場で浄化し再利用する汚水処理装置です。水と土が持つ自然の力を有効利用した「水土の技術」はローテクで、水土浄化システムは自然界の浄化能力を装置の中にギュッと凝縮したようなスモールスケールな汚水処理施設です。スローな維持管理で個々人の生活に寄り添うことができる仕組みでもあり、人口減少や地域による人口格差が進行していくこれからの時代に必要なツールになると確信しています。
スモール&スローそしてローテクで公衆衛生を維持発展させることが重要であると私たちは考え、水土の技術を多くの都市部や地方・地域に拡散し新しい社会インフラネットワークを築くことを目指しています。
さて、この大きな目標を達成するためにはハイテクも必要です。
具体的には、維持管理・メンテナンスを効率化するための仕組みが必要です。どんなに良い機械や仕組みもメンテナンスが不十分だと力を発揮できません。
メンテナンス項目の中でも重要なものが水質管理です。水土浄化システムで処理し再利用する水の水質は一定の基準をクリアした安全な水でなければなりません。また、当システムの心臓部とも言える土壌槽の異常は処理水の水質から判断しています。
現在、この水質管理は現場に行って実際の処理水を採取して検査するという方法で行っています。これは水質検査する度にいちいち現場に行かなければならず、3ヵ月毎の定期点検の時くらいにしか水質検査を行えません。また、異常がある時は多くの場合、利用者から「トイレの水が茶色いです」等の報告を受けてから対応するというように、異常発生から対応までのタイムラグが発生してしまう点も問題です。
各地に分散する水土浄化システムの水質管理を効率よく行うための仕組みについて考えてみてください。
この課題について、研究し社会実装できる仕組みを高専生の皆様にご提案いただきたいです。
①流入水(汚水)と処理水の水質を遠隔地から連続的にモニタリングできるシステムを考えてください。
②水土浄化システムは電気がなく自家発電で稼働しているところも多いです。省エネで水質管理が可能なシステムを考えてください。
<参考サイト>
一般社団水土の技術研究協会 公式サイト│水土浄化システムとは?
https://www.suido-tech.or.jp/about.php